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米国の内科の近況

米国の内科の近況

日本内科学会 認定内科専門医会
板東 浩1)、吉田 聡2) 
   
はじめに
 日本内科学会・認定内科専門医会は長年、様々な診療・研究・教育
活動を行っており、米国内科学会との国際交流に関わるものもある。
筆者らはこのたび米国内科学会のフェロー資格(FACP)を授与され、
2000年4月にフィラデルフィアで開催された年次集会に参加した。
本稿では、様々な講演の中から本邦でも有用と思われる情報を紹介
したい。
1。診療所の検査必須項目
 初期医療ですみやかに施行せねばならない検査は、赤沈、便潜血、
尿検査一般と沈渣、迅速ストレプト抗原検査、伝染性単核症スクリ-
ニング、末梢血液検査、カリウム、血糖、プロトロンビン時間、
KOH 染色、膣分泌検査、グラム染色、蟯虫染色、前立腺分泌検査、
滑液スクリ-ニング、性交後の検査、ヘムテスト、などである。
本邦では外来で染色検査を行う場合は少ないが、米国ではエビデン
スが得られる検査は直ちに実施するという姿勢がみられた。
2。大腸癌のスクリーニング
 米国では、大腸・直腸癌は死因の原因で最も多く,年間に13万人
の新患と5.6万人の死亡がある。50歳の人は5%のリスクで大腸・
直腸癌になり、2.5%の確率で死亡する。しかし、このリスクは1年
毎の便潜血検査で33%、5-10年毎の大腸内視鏡で約60%減少できる。
本癌のスクリーニングはそれほど普及していない。現時点で有効な
方策は、家族歴が陽性とかポリペクトミー後の患者などハイリスク
グループの経過観察である。
 便中ras遺伝子の突然変異の検出法が報告されており、5-10年後
にはvirtual colonoscopyなどの新アプローチ法が期待されている。
3。院内感染・12のヒント
 本邦だけでなく米国でも院内感染は大きな問題である。病院に
おける抗菌薬耐性の問題解決には、下記の12のステップが必須
である。
1)ワクチン接種
2)カテ-テルは特に必要な場合のみ
3)培養検査を提出
4)抗菌薬を投与し経過観察
5)専門家からの助言を導入
6)発生した環境や条件を把握
7)タ-ゲットを絞り狭いスペクトラムの抗菌薬を選定
8)培養陰性なら抗菌薬を中止
9)バンコマイシンが本当に必要かどうかを専門家に相談
10) カテ先の培養はコンタミ(雑菌)が多く治療が必要かを検討
11)分泌液から他の患者へ伝播するので、隔離の方策を考慮
12)医療従事者の手から感染するので手洗いの実行
 上記の1-2は感染の予防、3-4 は感染の根絶、5-10は抗菌薬の
賢い使用、11-12は伝播の予防である。本マニュアルは、いずれの
病院でも応用できるので参考にされたい。
4。代替療法
 米国では補助的・代替療法(Complementary and Alternative
Medicine,CAM)と呼ばれる。CAMには、整体、鍼、灸、芳香療法、
バイオフィ-ドバック、気功、色彩療法、園芸療法、運動療法、
全人的健康法、想像療法、瞑想、音楽療法、植物抽出物、漢方薬、
薬草療法、健康食品、リラクセ-ション、自己鍛練法、シャ-マニ
ズム、治療的マッサ-ジなどが含まれる。NIHの年間調査では、
プライマリ・ケア医への受診数(3.9億人)より、CAM への受診数
(6.3億人)が多い.自費で支払う金額では、全米すべての入院費用
よりCAMへの費用の方が多い時代だ。
 現在医学校の64%にCAM の講義があり、68%が選択で32%が
必修科目である。代替医療が大きなウェイトを占める現在、医師は
CAMに関して適切な助言を与えねばならない。
おわりに
 今回の米国内科学会に参加して感じたことは、カバーする領域が
本邦の内科より広いことだ。同学会は米国のプライマリ・ケアを
担う重要な科と認識している。総合診療やGeneral Internal
Medicine、家庭医療学が叫ばれている今、患者のニードに応じた
守備範囲について考える必要があるように思われた。
(徳島大学第一内科、pianomed@clin.med.tokushima-u.ac.jp1),
ハーバード大学呼吸器科、syoshida@nisiq.net2))

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