◆ 346・心とからだを癒すモーツァルト

~健康のために~
                                                 板東 浩

キングレコード NKCD 7070~7072 [CD3枚組]
税込み定価5,400円、2005年1月20日
http://www.kingrecords.co.jp

監修・推薦の言葉
板東 浩(医学博士、ピアニスト、日本音楽療法学会評議員)

●みなさんは、手品が好きですか?
 近頃のテレビ番組を見ていると、若くてハンサムなマジシャンが登場してきます。大衆の面前でトランプがすりかわったり、物が消えたり表れたりと、驚きの連続。ときには人の心の中まで読まれてしまうこともあり、全く不思議ですね。いったいどんな魔術を使っているのか、ワクワク、ドキドキ、します。こんな魔法にかけられたような状態は、英語で「charmed」と表現されます。
 「charm」とは魅力、魅了するという意味。そう言えば、チャーム・ポイントという呼び方もあります。また、清楚で可愛い女性に対して「チャーミングな方ですね」と誉めることもあるでしょう。
 つまり、素晴らしいマジックや素敵な人に出合ったときには、その魅力に惹かれて、うっとりと心を奪われてしまうこともあります。

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●このような魔力のパワーが、モーツアルトの音楽にあるのを御存じですか?
 「モーツアルト効果」としてよく知られています。「モーツアルトを聴くと頭がよくなる」というような話を、どこかで聴いたことがあるでしょう。
 それでは、その医学的な側面を少し解説してみます。1990年代初頭に、フランシス・H・ラウシャー医学博士らが、モーツアルトのソナタ曲を学生に聴かせる研究を行いました。すると、空間把握に関する知能検査で得点が上昇し、音楽によって知能指数が高くなる可能性が示されたのです。
 その後、理論物理学者のゴードン・ショウは「モーツアルト音楽は、脳をウォーミングアップさせる」と提唱。引き続いて、アルフレッド・トマティス医師は、胎児が声を聞いて音を聴くことを実証し、母親の声とモーツアルト音楽の類似性などを唱えました。ドクター・モーツアルトとの異名を持つトマティス博士の指導を
受けて、アメリカのドン・キャンベル博士が「モーツアルト効果」について書いた著書で音楽療法を確立させ、音楽と癒しが研究されていくようになったというわけです。

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●さて、最近のブームといえば「癒し」。いろいろな業界でよく取り上げられていますね。ここで、「癒し」という漢字の成り立ちについて考えてみましょう。
 まず、「愈」の字は「丸太をクルっとくり抜いて作った小さな舟」を意味しています。次に、「愈」に「○(やまいだれ)」を付け加えると、「癒」は「身体の中にある病気のかたまりを、クルっとくり抜いてしまう」ことになるのです。
 心や身体が癒されば、安心できますね。心が安(やす)らぎ、そして和(なご)やかな気持ちになります。あなたは毎日の生活で、いつでも「癒し」を感じていますか?いやいや、そんな人は数少なく、稀と言えるでしょう。
 実は、「癒し」を感じられるためには、その逆の体験が必要となります。大きなストレスを回避せず立ち向かい、厳しい経験を積むことによって、その対極の「癒し」も体感できるのです。すなわち、「メリハリ」がポイント。たとえば、楽器では、弦を緩めたり(滅り)、ぐいっと引っ張ったり(張り)しますね。同様に、あなたの心と身体にも、緊張と弛緩のバランスが大切なのです。

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●それでは、モーツアルトの人生で、メリハリはどうだったのでしょうか?
 天才作曲家の彼は、子供の頃から様々な甘苦を味わいました。1756年に生まれ、わずか3歳でピアノを正しく弾き、5歳でメヌエットを作曲。6歳からは宮廷で御前演奏を行い、幼少の頃から「神童」と騒がれていたのです。
 ところが、彼の生涯は、厳しい旅の生活を抜きに語れません。わずか6歳から「ステージパパの元祖」といわれる父レオポルドと、ヨーロッパ各地へ演奏の旅に。11歳までに毎年、結節性紅斑、上気道炎、扁桃腺炎、腸チフス、関節リウマチ、天然痘と病魔に見舞われます。治療といっても、悪い血を除く瀉血など原始的な
治療が行われていた時代。過酷な生活環境の中で、苦境に立たされながらも、モーツアルトは天真爛漫で親しみやすい曲の数々を作曲したのです。

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●モーツアルトの音楽は、なぜ人の心を捕らえるのでしょうか?
 どんなに研究しても、魅力の全容は解明できません。でも、その一つに「同質の原理」が挙げられます。つまり、私たちは、嬉しいときには快活な音楽を、気持ちが沈んでいるときには静かで美しい音楽を聴きたくなるものです。本理論は音楽療法の基盤であり、心の状態と同じような質の音楽を、人は自然に求めるのですね。
 心が元気になれば、身体にも活気が溢れてきます。世界保健機構(WHO)による「健康」の定義をみると、心的、身体的に加えて、霊的(spiritual、スピリット)なファクターが追加されています。今後はbody(身体)とmind(頭)をつなぐ架け橋としてspirit(心)が重要視されていくことでしょう。

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●本CD曲集は、
CD1<リラックスできる~からだの癒し>、
CD2<新たな気分になる~心の癒し>、
CD3<明日への活力がわく~頭の癒し>と分けられています。
 いちど珠玉の名曲を聴き、各曲と自分の気持ちとの相性を感じてみてください。そうすれば、その日のフィーリングや、仕事や休憩、食事、運動、睡眠などのスケジュールに応じて、生活の中で好きな音楽を上手に活用できるでしょう。
 手品のマジックには必らず「タネ」があり、見つけられます。一方、モーツアルトの魔術の「種明かし」は至難のわざです。チャーミングに感じる曲は人によって異なりますので、各人が元気になる種を見つけてください。その種が芽吹いて大きく開花し、皆さまの人生が健康でハッピーに展開していくように、期待しております。

●監修者◎板東 浩 略歴

・医学博士:徳島大学医学部卒業
 日本糖尿病学会指導医・認定医 / 日本プライマリ・ケア学会理事
 日本内科学会専門医会評議員 / 米国内科学会上級医(FACP)
・ピアニスト:認定音楽療法士、日本音楽療法学会評議員
 全四国音楽コンクールピアノ・エレクトーン部門各1位
 CD付き楽譜集「日本の四季のうた」(音楽之友社,1998)
 日本バイオミュージック学会第20回学術総会大会長(1999)
 PTNAピアノコンペティション全国決勝大会奨励賞(2001)
・スピードスケーター:全国大会で優勝歴数回(2000-2003)
 徳島県代表の冬期国体スピードスケート選手(1999-2003)
・エッセイスト:医学論文やエッセイなど印刷物600点以上
 生活習慣病や音楽、芸術文化に関する講演活動500回以上

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