◆ 345・日本音楽療法学会が開催

日本音楽療法学会が開催
医学博士・日本音楽療法学会評議員 板東 浩

 日本音楽療法学会(日野原重明理事長)の第4回学術大会が、岡山県倉敷市の川崎医療福祉大学で平成16年9月3~5日、「音楽療法の『音・音楽』の意味・役割を考える」をテーマに、岡山県倉敷市の川崎医療福祉大学で介意された。約2000人が参加した。本稿では大会の概要を紹介したい。

 学会期間には、約170に達するレクチャーや発表が行われた。第1日目には、臨床的即興演奏の哲学(若尾裕)、緩和医療と音楽療法(柏木哲夫)、高齢者の音楽療法の実際と評価(北本福美)など、6会場で19の講習会が開催された。第2~3日目には、美的音楽療法の可能性(リー)、コミュニティー音楽療法と文化の変化
(スティーゲ)の海外招請講演などがあり、音楽療法を広い視野から捉えることができた。特に感銘を受けたのが、湯川れい子氏の特別公開講演「音楽ってなんだ?~一音楽ファンの目から見た音楽療法への期待と提言」。長年にわたる音楽との関わりや、子守唄復興運動などの幅広い活動が発表された。

<医学界、高齢者施設での音楽>
 現在、医療界では、高齢者施設における音楽療法が大きなうねりとなっており、本学会でも音楽療法士の国家資格化についての協議が進められている。音楽療法関係者が本大会で学んだ音楽の技術的側面、医学の精神心理的側面、真善美を追求する芸術的側面が、今後の音楽療法の展開に必ずや大きく寄与することが考えられ、今学会は非常に重要なものといえる。

<高齢者と音楽>
 高齢者対象のレクチャーとしては、高齢者への音楽療法が「セラピーか」、「レクリエーションか」、「アクティビティか」の差異を明確にすることが必要で、レクワーカーやOT、STが用いる「音楽活動」、セラピスト、施設、対象者の各立場からの「治療目標、経過の記録とアセスメント」などについて説明された。
 脳血管障害に伴う失語症と失音楽症(種村純)では、聴く、話す、読む、書くなどの失語症の詳細に、運動や表現能力の障害、メロディが弁別できない受容的障害、音楽に対する情動反応の変質、言語のリハビリテーションに対する音楽の補助的な使用についての講演があった。
 脳損傷におけるクライエントのアジテーションとその対応(宮腰由紀子)では、クライエントが動揺や興奮を示した際の対応について、認知障害における行動や情動の障害には、記憶、遂行機能、情動、言語、失行、失認などがあり、これらを冷静にアセスメントして対処することが重要である、とコメントがなされた。
 一般演題やポスターの中では、高齢者に関する発表が最も多く、そのキーワードとしては、痴呆、失語、作業分析、身体運動、回想法、脳卒中亜急性期、うつ病、ストレス緩和、難聴、集団セッション、小グループセッションなどがみられた。

<筆者の感想>
 大会長を務める岸本寿男氏(国立感染症研究所室長、川崎医療福祉大講師)は、感染症学者であるとともに、米国で日本人初のエミー賞(作曲)を受賞し、音楽CDをリリースしている尺八奏者でもある。従来、様々な機会で音楽療法の啓発活動を続けてきている。大会期間中に筆者が感じたキーワードは、「アンサンブル
(ensemble,仏)」。語幹のsembleはsimul, similと同様に、一緒に、似たという意味を有し、assemble(集める)、simultaneous(同時の)、similar(似た)などの単語がある。食事が楽しいのは、家族や友人と一緒に食べてコミュニケーションをするからである。言葉に加えて音楽という共通のツールを用いれば、相互に心を通いあわし、喜びが倍増すること間違いない。

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