◆ 344・頭の良くなるモーツァルト
キングレコード CD5枚組「頭の良くなるモーツァルト」2004年8月発売

監修・推薦の言葉   

板東 浩(医学博士、ピアニスト、日本音楽療法学会評議員)

 「モーツァルト効果(The Mozart Effect)」!あなたは、お聞きになったことがありますか?
 以前から、「モーツァルトの音楽は、人の心にプラスの効果がある」と言われている。聴く人の心を洗うように清らかで、輝くような美しいモーツァルトのメロディー。「天上の音楽」といってもよいほどだ。いったい何が素晴らしいのだろうか?
 18世紀という時代。当時、短い生涯ながら、生み出されたのが豊かな内容の音楽の数々。すべてのジャンルにわたり、人の心をとらえる高水準の曲を遺した孤高の天才だ。数百年たっても、彼を超える作曲家は現れていない、といっても過言でない。
 モーツァルトの音楽には、芸術的なアートの部分と、科学的なサイエンスの部分とがあるように、私は思う。実は、モーツァルトの魅力と魔力を突止めるために、世界の医学者や科学者が、長年にわたり研究を続けてきているのだ。

 最初の発表は、1993年に一流の医学雑誌"Nature"に掲載された論文。米国ウィスコンシン大学のラウシャー博士らが、モーツァルトのソナタ曲(K448)を10分間学生に聴かせる実験を行った。すると、空間認識の能力が上がり、抽象的な思考能力が高まり、知能指数(IQ)が上昇したという。
 この発見が、モーツアルトのブームを巻き起こした。胎児への情操教育や幼児への教育効果に応用されたり、公立保育園に週1回クラシック音楽を流すように義務づけた米国の州まで現れた。
 その後、「IQ上昇はわずかに過ぎない」(ハーバード大学、1999)との反論が出たが、「モーツァルト効果は、音楽の専門家よりも通常の人々に認められやすく」(英国のウェストミンスター大学、2002)、「モーツァルト音楽の聴取で、大脳の中の遺伝子レベルでも学習記憶能力が向上する」(スタンフォード大学、2004)という支持する報告もあり、論議の的となっている。

 このような音楽と医学の研究は、音楽療法を大きく発展させてきた。すなわち、アルツハイマー病のように、精神・神経・心理的な障害者に対する効果が、次第に明らかになってくる。また、健康な学童や受験生、主婦、高齢者、ストレス社会で働く勤労者に対して、音楽を上手に用いる音楽健康法についても、適用例が増えてきている。
 音楽とは千差万別のものであり、必ずしもモーツァルトだけが効果がある、というわけではない。確かに、各人によって好みの曲があり、国、文化、慣習、歴史によって当然異なるものである。しかしながら、概して、モーツァルトの音楽は、大多数の人に受け入れられやすいのが、その特質の一つであるといえる。

 本CD集を使用する場合のコツを、少し授けよう。音楽とともに情緒豊かに育てられた子供では、感性豊かで優しい心が、一生の財産となる。最初は、モーツァルトのような心に柔らかく響く音楽が最適だ。成長とともに、いろいろな音楽に触れていくとよい。
 受験生で、静かな環境で勉強する学生の場合を考えてみよう。集中力は約1時間しか続かないとされているので、1時間ごとに5分ほど、休憩を取ろう。その際に、ただボーっと休むのではなく、積極的休憩として、本CDを聴いてリフレッシュするとよい。
 一方、受験生でも、BGMを流しているほうが勉強しやすいという学生もいる。ここで大切なポイントを伝えたい。歌詞があったり抑揚が大きな曲は、どうしても集中力が途切れたりするものだ。本CDは穏やかな楽曲が含まれており、「ながら勉強」にも十分利用できる。疲れた際には、目を閉じて心地よい音楽に身体を委ねると、リラックスできるだろう。

 いろいろな場合を概説したが、モーツァルトの音楽の特徴は、私たちの心を和ませ癒してくれることである。従来は知能指数(IQ)が論議されてきたが、今後は感情指数(EQ)が注目を浴びる時代が到来するだろう。フランスの医師でドクター・モーツァルトとの異名を持つトマティス博士はいう、「世界中の人々に受け入れられるモーツァルトの音楽は、創造性を引き出し、自律神経を覚醒させる」と。自律神経のバランスが取れていることが、心と身体を健康に導く。
 いま、日本の社会構造は、さらに複雑化しつつある。様々なストレスが降りかかり対処しきれない人も多い。健やかな毎日を目指し、本CD「頭の良くなるモーツァルト」を活用されることを、是非ともお勧めする次第である。

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