◆ 325・音楽ですっきり

 今年の夏は暑かったですね。日本では気候だけでなく、特に熱くなったのは政治。森首相の後に登場した小泉首相が、いろいろな所で「小泉フィーバー」を起こしました。
 大相撲の千秋楽、優勝決定戦を思い出します。貴ノ花が膝をひきずりながら、気迫と闘志で勝ちました。首相は「痛みに耐えてよくがんばった、感動した、おめでとう」と。
 なぜ、小泉首相の話は人の心をとらえるのでしょうか。おそらく、気持ちを率直にしゃべるからでしょう。国会では、いろいろな声明(せいめい)が発表されます。その中でも、小泉首相の言葉は、聞いていて、わかりやすいと思いませんか。
 さて、仏教の世界には、私たちが(お坊さまが)毎日のように唱えている言葉がありますね。これを声明(しょうみょう)と言います。読み方は違っても、漢字で書くと同じ声明なのです。この中には、私たちが家族や友人、近所の人たちと、仲良く一緒に暮らしていく智慧がぎっしり詰まっています。
 その声明は、遠い昔からずっと語られてきました。声を出してしゃべっているうちに、次第に調子がよくなって、リズムや旋律が生まれてきたのです。これが日本の音楽のもととなり、演歌へと発展しました。
 日本の音楽の特徴は、歌と踊り、物語が一緒にくっついていること。ちょっと難しく言えば、日本の古典芸能は、音楽と舞踏と演劇の三要素を備えた総合芸術なのです。たとえば、能や狂言、歌舞伎、人形浄瑠璃などには、すべてストーリーがありますね。音楽舞踏劇を目で見て、耳で聞いて、日本人は楽しんできました。舞台にはいろいろな工夫があります。筋書きや俳優の心理がよくわかるように、大声で叫んだり、三味線でデンデンと音を出したり。いちど、京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)や、勧進帳(かんじんちょう)などをご覧になるといいですよ。

 演劇や映画を観たときに、みなさんの気持ちはどう変わりますか?愉快なコメディで笑えば、楽しくなる。逆に、つらい恋の物語や悲劇の映画に、涙が溢れて泣いてしまった場合。映画館から出てきた時に、苦しいというよりも、なぜか心がすっきりしたと感じたことはないですか。

 哲学者アリストテレスは「心の浄化」を唱えました。「楽しい時には、はしゃぎなさい、悲しい時には大いに泣きなさい」と。これが音楽療法の「同質の原理」につながってきます。嬉しい時には軽やかな音楽を、つらい時には静かで美しい音楽を聴くと、心が洗い清められますよ。
 そこで、日本が生んだ世界の音楽文化、「カラオケ」をお薦めします。私たちの心は、いつも落ちついて平穏でいるわけではありません。「会社の上司は自分を認めない」「給料が安い」「うちの父ちゃんは、好き勝手して」「息子は本当に困る」「うちの母ちゃんはいつまでたっても綺麗にならん」、などなど。
 うらみ、つらみ、ねたみ、そねみ、ひがみなど、心が苦しいときには、カラオケでストレスを発散しましょう。まず、気持ちと同じ質の曲として、恨みの恨歌(えんか)から始めよう。大きな声で絶叫し、心のうっぷんを晴らせます。だんだん調子がのれば、次は艶っぽい艶歌(えんか)。アイドルの女性をイメージして、自分が恋人になった気分。盛り上がった最後には、演劇の演歌(えんか)を選ぼう。有終の美として、リズミカルで楽しい曲でお開き!
 こんなやり方でどうですか?「こんなんで、えーんか?」、とおっしゃる人もあるでしょうが、まあ、だまされたと思って、試みてください。そして、あなたの毎日の生活で、音楽を上手に使えば、身も心も健康になること、間違いなしです。

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