美しく清楚な女王

 アユの遡上が真っ盛り。吉野川の柿原堰の近くには、釣り好きの人々が集まってくる。勝浦川や那賀川でも美味しいアユが取れ、かつては天皇陛下も召し上がられたこともある。

 アユは清楚な姿の「川魚の王」とされ、日本だけに住む。中国では鮎がナマズを指すので、和ことばのカタカナ表記がよい。川底で孵化した稚魚はいちど海に入り、その後清流を川上へ遡る。秋には再び流れを下り、産卵すると一生を終えてしまう。だから年魚と呼ばれる。命が短いからこそ、よけいに美しいのではあるまいか。エレガンスに見えるが、縄張りのためによそ者を断固として追い払うなど、芯が強い性格も併せ持つ。

 さて、スポーツ根性ドラマの全盛時代に「アタックNo.1」があった。鮎原こずえが厳しい練習を続けて、女子高校バレー界の女王になるという物語。また「金メダルへのターン」の主人公は速水鮎子。水泳部のエース
で、ミュンヘンオリンピックの金メダルを目指す。ようやく完成した「トビウオターン」は凄かった。プールの壁を蹴って空中に飛び出すという究極の技。なお、速水鮎子という名前は、ぴったりだった。もし、遅井鯛子なら、ピチピチしたフレッシュな雰囲気が醸し出されない。

 夏の魚の風味を考えるとやはりアユは王者だろう。香魚と言われるように、一種独特の香りがある。常食は川のコケなので、育った川によって味も異なる。アユと出会ったら、「一期一会」の想いを伝えてみよう。

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