◆ 糖尿病-3 腎臓に影響

 先週までは、織田信長と神経障害のお話をしました。糖尿病の3大合併症として、神経や腎臓、目が影響を受けるのです。今週は、糖尿病によって、次第に腎臓が弱ってくることを説明します。
 腎臓には、体の中にたまっているいろいろな老廃物を、尿に溶かして体の外に出す働きがあります。そのメカニズムは、料理に使う「ざる」にたとえられます。麺類の水を切る時に、ざるに入れて上下に振ると、麺を残して水だけがざるを通ります。ざるの目が荒くなったり穴があいていると、残さなければならない麺がざるを通って、役にたちません。これと同様に、私たちの腎臓は、体にとって不要な老廃物をよく選んでから捨てる機能があるのです。とても優秀な濾過装置と言えます。

 糖尿病で腎臓が傷む「腎症」になると、この「ざる」の機能が損なわれ、大切なタンパク質が漏れ出てしまいます。そうすると、血の中の栄養分であるタンパク質が減り、体に水が貯まってきて、顔や足が腫れます。
ひどくなると全身に「むくみ」が現れます。尿の蛋白が増えていくと、血圧が上がり、「高血圧」に。その結果、血圧を調節する治療も必要になります。最後には、腎臓がうまく働けない「腎不全」となり、尿の毒が体の中に貯まる「尿毒症」を起こします。こうなれば、「透析」を週に数回受けなければいけません。幸いなことに、諸外国と異なって日本では、透析が必要な患者さんは、国が治療費を全額負担するなど、保護されています。
 
 腎臓病は、タンパク尿→むくみ→高血圧→腎不全→透析と、長年かけて次第に腎臓が弱っていきます。これらには、痛い、苦しいなどのはっきりした症状がないので、余計に注意が必要です。
 腎臓の働きが悪くなると、毎日食べている食事の内容も変えなければなりません。腎臓に負担をかけないよう、塩分を制限するために、味気のない食物となります。人によっては、タンパク質の制限も必要で、献立や
調理に苦労します。好きな物が好きなだけ食べられなくなります。これは悲しいことです。また、運動についても、タンパク尿、血圧、腎臓の働きの具合などをみて、総合的に判断しなければならず、制約だらけの生活になってしまいます。
 糖尿病の方で、腎症を診断するには、尿の検査が必要ですので、かかりつけのお医者様によくご相談ください。最近では、医学の進歩によって、早い時期から微量なタンパク尿が検査できるようになり、CAPDという
自宅で行える透析も臨床応用されてきています。また、糖尿病患者の集まりに対する支援など、ハード面だけでなくソフト面でも充実がみられます。

 高いレベルの医療が安心して受けられる国というと、世界中で日本がナンバーワンです。日本の医療制度は「ざる」ではありません。皆さんの腎臓の「ざる」がずっと調子よく働くように祈っています。糖尿病の患者さんは、体と心の生き甲斐を大切にしながら、うまく養生してくださいね。

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