◆ 特発性浮腫

Q: 特発性浮腫の特徴的な症状は?
A: 神経質な成人女性に多く、立位姿勢で浮腫が増悪し、朝夕の体重差が1.4kg以上となる。Keyword: 特発性浮腫、体重差、立位、利尿剤、レニン・アルドステロン系

 Case
夕方に全身浮腫をきたす特発性浮腫の1例
 患 者:30歳、女性。
 既往歴:26歳時に虫垂炎。
 現病歴:25歳ごろから、手足に浮腫が出現し、その後体幹にも浮腫をきたすようになった。1日に2-3kgの体重増加と頭痛がみられ、数日ごとの利尿薬の服用が必要となったため、精査のため入院。尿検査、生化学、電解質、内分泌検査で異常なく、特発性浮腫と診断された。

 特発性浮腫は、浮腫をもたらす既知の疾患に該当せず、後述する特徴がみられるものである。生化学検査の普及で浮腫の診断が容易となり、近年報告例が増えている。ただし、診断基準が明確なものではなく、根拠に基づくデータを得るのは難しい。本稿では、筆者の経験例を提示しながら、臨床の場で役立つように概説したい。

■特発性浮腫の臨床的特徴
 本疾患の臨床的特徴を表1に示す。ポイントは朝夕の体重差で、通常1.4kg以上/日を診断基準とするが1)、2.0kg以上とする場合や、1kg程度でも随伴する症状が強い場合も含める。
■診断のプロセス
 本症の診断は、浮腫をきたす他の疾患を除外することによる(図1)。臨床の場で頻度が高いのは月経前浮腫であり、体重を記録させて鑑別する。薬剤性浮腫では、非ステロイド性抗炎症薬、漢方薬、降圧薬、利尿薬などをチェックする。
■特発性浮腫の病態
 発症のメカニズムについては、様々な因子の関与が考えられている(表2)。
本症の診断を確認する際には、水負荷試験を実施する。12時間絶食後、早朝空腹時に排尿させた後、20ml/kg体重の水を30分以内で飲ませ4時間までの尿量を測定する。正常では飲水量の70%以上が排泄されるが、本症患者では水分は身体に貯留する2)。筆者経験例を表3に示した。
■体重日記と薬剤投与の試み
 症例によって、生理前の体重増加や薬剤に対する反応が異なるので、体重日記をつけさせることは重要である。筆者の経験例を図3に示す。
■治療と対策
 通常、病歴を詳聴取すると、食事量が大幅に変動したり、利尿薬を長期に服用、下剤の乱用、習慣性嘔吐、などがあり、精神的なアンバランスの存在がある。
 従って、生活上のアドバイス・治療として、
・食生活の改善、規則的な食生活
・低塩食(3-5g/日)による浮腫の改善
・利尿薬を次第に漸減
・スピロノラクトン、アンジオテンシン変換酵素 阻害薬、ブロモクリプチンなどの試用

◆おわりに
 本疾患のマネージメントに際しては、薬剤を含む病歴を詳細に聴取すること、また、日常生活で精神的に不安定になる因子についても聞き出し、生活日誌や体重日記を記載させることが重要なポイントとなる。

文献

 1) Thorn GW: Approach to the patient with "idiopathic edema"or "periodic swelling". JAMA 206: 333, 1968.
 2) Streeten DH, et al.: Studies of pathogenesis of idiopathicedema. Clin Sci Mol Med 45: 347, 1973.

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