水のパワー

 
 世界一のバンジージャンプ。
降下距離は111m、ビルなら30階ほどの高さだろうか。今、私はまさに飛ぶところ。眼下のザンベジ川を見ると、目がくらみ、足がすくんでしまう。顎をあげて、はるか前方の山々に向かって、さあ行くぞ、ジャンプだ。「わぁーーー!」

 私は国際学会でアフリカ南部のジンバブエに来ている。かつては、南ローデシアと呼ばれた国だ。隣のザンビアとの国境に流れるザンベジ川。ここに世界三大の滝の一つ「ビクトリアの滝」がある。ジンバブエ側で高さ120mの気球に乗ってみた。見渡す限りの地平線の中に、モクモクと舞い上がる白い水煙。滝の大きさと比べると、人間や動物は、芥子(けし)粒みたいに小さい。

 滝めぐりのツアーは、驚きの連続。天地を揺るがすような轟音とともに、大河がまっ逆さまに落ちていく。天気が良くても、飛び散った水のしぶきが数百mも飛び散り、スコールのような雨が降る。身体がぐっしょり濡れても、心はなぜか癒されるようで気持ちがいい。7色の虹が私たちを包みこみ、自然と一体化したかのようだった。

 まさに、莫大な水を飲みこむ地球の割れ目。なぜ、自然はこのような大瀑布を作ったのだろうか?こんなに大量の水はいったいどこからやってくるのだろうか?遠くから眺めると、さっき飛んだ111mは、大したことがないように思える。小さな人間が、大きな水のパワーをもらったような気がした。

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