月見と雅楽
月見と雅楽
水面(みなも)に漂う紅葉の葉。夜空には、ぽっかりとまん
丸い月がこちらを眺めている。徳島市の新町川のほとりで、
宮廷の調べを聴く「観月雅楽演奏会」が先日行われた。
水辺に流れる雅楽の音楽。簫(しょう)や篳篥(ひちりき)
が奏でる荘厳な音色は、私たちの心を震わせる。直垂(ひたたれ)
を身にまとい、幻想的な舞まで披露された。悠久の時を越え、
平安時代にタイムスリップしたかのような幽玄の世界だ。
秋になると、日本古来の趣が感じられる。空気が澄んでいる
ので、月がきれいに見える。だから、旧暦の8月15日の満月は
1年で最も美しく、「仲秋の名月」とか「十五夜」と呼ばれる。
翌日は、十六夜(いざよい)の月。月見にはぴったりの時間帯
だ。子供のころ、縁側や窓辺に、だんご、すすき、里芋などを
飾って秋の名月を鑑賞した人も多いだろう。その情景では、
風がすすきを吹き抜ける自然の音こそが、音楽であった。じっと
月を眺めると、うさぎが餅をついているように思えたものだ。
毎晩、月が東の空から顔を見せる時刻は遅くなる。だから、
その翌日からは、立待月、居待月、寝待月と呼ばれている。
一カ月後、旧暦の9月13日になると、次に美しいとされる
「十三夜(じゅうさんや)」を楽しめる。だんごやすすきに
加え、枝豆や栗なども供える。月の光を身体いっぱいに浴び
ながら、はるかかなたの月に想いを寄せてみよう。
いちど、月を愛でながら、秋の風流を感じてみてはいかが
であろうか?