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手塚治虫はピアニスト

手塚治虫はピアニスト

手塚治虫原作の演劇「陽だまりの樹」を、銀座で観た。手塚治虫の役は中井貴一、漫画雑誌の編集者には宮沢りえ。二人は取材のため、幕末の江戸にタイムスリップした。そこには、治虫の曽祖父にあたる手塚良庵という蘭方医が実在していたのである。
 手塚良庵の血を引き継ぐ曽孫の名前は、治。子供のころから虫が好きだったので、漫画家のペンネームは治虫とした。医学部を卒業し、タニシの精虫の研究で医学博士号も取得。医者でもある手塚先生の漫画には、生命の尊厳や創造というテーマが流れている。天満博士が創りだした「鉄腕アトム」、天才外科医の「ブラック・ジャック」、猿田博士が生命の創造に思いをはせた「火の鳥・未来編」、バイオテクノロジーによる新生命の誕生を予感させる「ネオ・ファウスト」などが,科学編と言える。歴史編として、「アドルフに告ぐ」では,ファシズムの台頭から破滅までを、「虹のプレリュード」では、作曲家ショパンの激動の青春を描いている。
 さて、手塚先生は素晴らしいピアニストでもあったことを,皆様はご存知だろうか?ピアノのコンテストで優勝するほどの腕前。特に,即興演奏では,その場の雰囲気に合わせて当意即妙にアレンジし,聴く人を感動させたという。手塚先生は,漫画でも音楽でも,新しい世界の創造者であり,愛とヒューマニズムを持った演奏家でもあったと言えないだろうか。
 江戸期三百年の大樹は,すくすくと育ったが、陽だまりでまどろんでいるうちに,中身は虫に喰われて空洞となってしまった。現代の日本も、高度成長、バブルと浮かれ、その余韻にまどろみつつ,何かに内側を蝕(むしば)まれてきている。手塚先生が日本を治療してくれるなら,何を創造し,何を演出するだろうか。

Salala No.23 (1998.9.4.), 1998

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