大杉に誓う

「川の流れのように」の歌が会場全体を包み込む。観客全員が無意識のうちに自然と口ずさんでしまう。クライマックスにぴったり。私たちの身体と心は、リズムに合わせてゆったりと大きく揺らいでいた。

 先日、徳島に演劇「美空ひばり物語」がやってきた。全国ツアー中で、まさに芸術の秋にふさわしい。美空ひばりの人生を、子供の頃から描いたもの。ひばり役は浅茅陽子が演じ、母親役には南田洋子、弟役には国広富之と、豪華キャストだ。また、江利チエミと共に「三人娘」と呼ばれていた雪村いづみは、ひばりとずっと親交を深めていた。複雑な想いを持ちながらの歌や演技はとてもお洒落だった。

 ストーリーには山あり谷あり。笑いもあれば、涙も流れる。不屈の精神で足の痛みに耐えたり、東京ドームのこけらおとしで不死鳥のごとく蘇ったりと、わくわく、はらはらの連続だった。

 ひばりさんは子供の頃、巡業中に高知県の大豊町でバス事故に会い、九死に一生を得た。そのとき日本一の大杉に向かって、「日本一の歌手になるぞ」と願を懸け、美しい空に飛ぶひばりを見て芸名を決めたシーンは、特に印象深かった。

 吉野川の源は高知県にあり、多くの雨が川の流れをつくり、樹木を育てている。音楽療法の研究調査によると、中高年が好きな歌手のトップは美空ひばり。日本人の唄心や人生観の源がひばりの歌に感じられ、多くのファンがひばりを長年育ててきたのではないだろうか。

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