◆ 代謝のしくみー1

●はじめに
 「代謝」というのは、本来わかりやすく魅力的なもの。なぜなら、私たちが毎日生活していく上で、食べたり動いたりする基本的な活動を支えているからだ。しかし、代謝という言葉をきくだけで、難しいと感じるナースは少なくない。あなたはどうですか?
 本稿では代謝について述べるが、通常の教科書にありがちな順序と内容とではない。イラストを駆使しながら、わかりやすく平易に代謝のおもしろさを解説したいと思う。
それでは、早速スタート。

●ヒトはなぜ動けるか
 優秀なナースは、動作が機敏でしなやかだ。微笑みながらテキパキと日常業務をこなせるのは、なぜだろうか?そのポイントは筋肉。顔の表情も手足の動作にも、筋肉が働いている。
 それでは、どうして筋肉が動くのだろうか?筋肉が収縮できるのは、図1のように、ブドウ糖が血管の中から入ってきてブドウ糖が燃えてエネルギーを作るから。そして、筋肉は蛋白質の成分でできていて、肥満になると脂肪がたまってくる。
 脂肪は悪者ではなく大きなエネルギーを貯えており必要時には燃えてエネルギーとなる。つまり、きちんと仕事をしているのだ。ただし、脂肪が増えすぎると「霜降り肉」になるのは、ナースのみなさんはご存じの通り。
 このように、炭水化物、蛋白質、脂質がうまく仕事をしているので、いろいろな代謝がスムーズに進んでいる(図2)。私達が何にも意識しなくても、身体の状況に応じて、良きに計らってくれるので、動き回ることができるというわけ。

●エネルギーと栄養
 ヒトにはエネルギーが必要だ。その理由は3つにまとめてみよう。
? 乳児期から青年期に成長するため
? 損傷を受けた組織を修復するため ?生命を維持して活動していくためである(図3)。
 これらのエネルギーは、食事として身体の外部から摂取する物質から得られる。このプロセスが栄養(nutrition)であり、基本となる物質が栄養素(nutrient)と言われており、下記の5種がある。
1)炭水化物(carbohydrate)
2)脂質(lipid)
3) タンパク質(protein)
4)ビタミン(vitamin)
5)無機質(mineral)
 この中で、前3者が3大栄養素と呼ばれている。生きていくために、いずれの栄養素も必須なのだ。その理由はなぜだろうか。
 1) エネルギーの産生:主に糖質と脂質が使われる。体温維持や筋肉活動、酵素反応などのエネルギーを供給する。
 2) 代謝を調節:タンパク質が酵素やホルモンなどを構成する。ビタミンは補酵素として、ミネラルは酵素活性、筋肉の収縮などに働く。
 3) 身体の成分を構成:主にタンパク質と脂質が組織を作っている。しかし、栄養素のすべてが細胞の構成に関わっていると言ってよい。
 このような様々な物質が働きあうことによって、体内で種々の物質が合成されるのを同化反応(anabolism)、エネルギー産生のために物質が分解されるのを異化反応(catabolism)という。
 同化は合成を意味しており、様々な物質にエネルギーを与えて合成する反応のことである。一方、異化は分解を意味しており、ある物質をバラバラに分解して、エネルギーを生み出すことなのだ(図4)。

●エネルギーの作られ方
 ヒトの身体というのは、実は自動車と同じ(図5)。自動車が走れるのは、ガソリンを燃やしてエネルギーを作るから。人が動けるのは、糖質を燃やしてエネルギーを作るからだ。
 車が走っていてガス欠になれば、直ちに車は動かなくなってしまう。しかし、ヒトでは、糖質の補給がない場合でも、脂質を燃やしたり、蛋白質を異化して燃やしてエネルギーを作ることができるのだ。つまり、絶食で水だけしか摂取できなくても、ある程度まではこのメカニズムによって生存ができることになる。
 その仕組みを図6で考えてみよう。糖質、脂質、蛋白質のいずれもが、TCA回路(クエン酸回路)に入る。そして、ATPを産生してエネルギーを作ることができるのだ。

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