糖尿病 肥満 糖質制限 ダイエット 音楽療法 新老人の会 徳島県スケート 板東浩 

モーツァルトと神の愛

モーツァルトと神の愛

演劇「アマデウス」を有楽町の日生劇場で楽しんだ。ヴォルフガング・アマ
デウス・モーツァルト役は市川染五郎、サリエリには松本幸四郎。親子キャス
トのためか、舞台から複雑なメッセージが送られてきた。
 モーツァルトは幼少の頃より旅人であった。ステージパパのレオポルドと
ヨーロッパ中を駆けめぐり、父と子の間に形成された特殊な心の絆。父親の
存在が息子にとって大きなストレスだ。夢に父親が現れてうなされる。ミサの
作曲を依頼する人の影は、現実なのか夢なのか。ステージでは、マントを纏っ
た影は幸四郎が演じ、染五郎に精神的苦痛を与え続けたのである。
 その苦痛が廻り回って還ってきたのか、数十年後、サリエリは精神病院にいた。
モーツァルトの才能に嫉妬し、「モーツァルトを毒殺した」と自分から言い出
した。この場面は、映画「アマデウス」の冒頭のシーンにある。ご覧になった
方も多いだろう。しかし、当時、心を病むサリエルの言葉を、周囲は全く相手
にしなかったとされる。
 モーツァルトの死因を調べると病死説と毒殺説がある。当時の検死調書には
急性粟粒疹熱と記されているが、リウマチ熱、心不全、尿毒症なども推測され
ているのだ。毒殺説には水銀中毒があり、秘密結社フリーメーソンや帝室劇場
総監督のローゼンバーク伯爵の陰謀だという話も伝えられている。
 アマデウスの舞台は、ロンドンの初演から常に少しずつ進化し続けている。
音楽の歴史も同様で、サリエリは当時の音楽を少し進化(evolution)させた。
一方、モーツァルトは、進化というよりも大変革(revolution)を起こしたと
言えるだろう。
 近年、進化論が見直されている。以前には、ダーウィンの適応説が知られて
いた。ジラフ(キリン)の首が長いのは、高い所にある餌を取ろうとしている
うちに、次第に首が長くなったとする適応説である。しかし、中間の首の長さ
のジラフが見つからないことから、この説が疑問視されていた。様々な研究の
結果、原因は遺伝子の突然変異によることが明らかになった。今や、従来の
適応説は否定され、2000年という現時点では突然変異説が最も有力である。
 進化と寿命の関係はどうだろう。サリエリは秀才で適応能力に優れていた
から、長生きをした。一方、モーツァルトは天才で、突然変異のような尋常
稀な能力があったため、若く夭折した、とするのは言い過ぎだろうか。
 「モーツアルトの音楽は神の音楽だ」と評した人がいる。宇宙の相対性理論
を唱えたアインスタインだ。博士は音楽を愛したバイオリニストでもあった。
ドイツの特許許可局に勤めながら、自らの物理学の研究を続けていた。多くの
人のアイデアに触れたことにより、彼の発想が進化し、地球にとって革命的な
発見につながったものと思われる。
 自然科学的に物事を見ることは、「神のパズルを解く」ようなもので楽しい
と博士は言う。物理学の歴史は、アリストテレスが風呂の中で体が軽くなると
いう、日常生活の視点から始まった。次に、医学生のガリレオ・ガリレイが
振り子の時間を計り、地球という巨視的レベルになった。その後、ニュートン
が地球、月、太陽の範囲で万有引力の法則を提唱。以上の物理学の進化を、
博士が大宇宙の次元でまとめたのだ。
 物理学の天才であった博士だからこそ、音楽界の天才たるモーツアルトを
理解し、評価できたような気がする。言い換えれば、科学を突き詰めると、
芸術の究極の姿と近い存在になり、大宇宙も人間という小宇宙も、神もすべて
同一になってしまうのか。今もなお、モーツアルトとアインシュタイン博士は、
宇宙を旅しながら、異次元で熱っぽく議論を戦わせているかもしれない。

powered by Quick Homepage Maker 4.91
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional