◆ モナリザは高脂血症

 ルーブル美術館。フランスのパリには、透明のガラスを幾何学模様に組み合わせたピラミッドがあります。遠くからでも、きらきらと光を放っています。私は今、お洒落なロビーを抜けて、お目当ての彼女に会いにいくところです。大勢の人の視線をあびて、彼女は静かに佇んでいます。いつもほのかな微笑みをたたえながら。

 そうです、彼女とはモナリザなのです。
彼女は当時、裕福な家の奥様でした。ふっくらとした顔と上半身の肉づきからも、リッチな食生活がうかがえます。ある学者がこの名画から身長と体重を推測したところ、約163cmで74kgという結果でした。ですから、彼女は「肥満症」であったのです。

 さて、実はほかにも病気があったのですが、あなたはご存じですか。美しい彼女の顔をじっと見つめれば、おのずと解答が出てくるのです。左眼の目頭(めがしら)の所に、皮膚が黄色くなっている部分があります。これは医学的に「黄色腫」と呼ばれており、コレステロールの塊なのです。黄色腫があるということは、血液中のコレステロールも高かったという証拠です。このように、モナリザは肥満症に加えて「高脂血症」という生活習慣病(成人病)にかかっていたことが、肖像画の分析でわかりました。
 「脂」とはあぶらを意味します。「月」(にくづき)がついているので、動物に関係がありますね。皆さまは、脂がよくのったトロを味わったことがあるでしょう。一方、「シ」(さんずいへん)がついた「油」もありますが、一般に、水と油はうまく混じりあいませんね。私たちの身体にはとても重要な、水の「血液」と油の「脂」があります。しかし、そのままではお互いの仕事がスムーズに進みません。そこで、登場するのが、優秀な貨物船です。
 船の本体は蛋白質で作られていて、貨物として「脂」を載せて運搬します。優秀である理由は、本体の材質が水とも油とも仲がよいことです。水の海や油の海など、世界中の7つの海だろうが、船は身体のすみずみまで自由に駆け回ります。

 さて、私たちの身体の「脂」について、ポイントを簡単にお話します。まず、コレステロール(Cho)が有名ですね。この頃は世間様から悪役みたいに扱われていますが、決してそうではありません。細胞の膜の成分や、ホルモンの原料として、なくてはならないものです。次に、中性脂肪(TG)があります。食べ過ぎて運動が少ないと、余ったエネルギーがTGとして貯められます。皆様のお腹をすこしつまんでみてください。ここに、エネルギーが貯蓄されています。ただし、銀行の貯金と違って、多すぎても誰も喜んでくれません。血液中のChoやTGが高くなった状態が、高脂血症です。
 さて、高脂血症が身体によくない理由は、動脈硬化が進むからです。動脈硬化とは、動脈の血管が硬くなったり詰まってくることで、血液の流れが悪くなります。皆様の家にあるプロパンや都市ガスのチューブを思い浮かべてください。新しい頃は弾力がありますが、古くなると、硬くなって表面にひびが入ってきますね。動脈硬化とはこのような状態なのです。

 ところで、Choの中には、善玉と悪玉があることが知られています。善玉は、身体の中のChoをかたづけてくれます(HDL)。一方、悪玉は、Choを全身にちらかします(LDL)。あなたのCho, TG, HDL, LDLがどれほどあるかを知るには、血液検査をすれば簡単にわかります。ただし、食後には血液中の脂質のデータが変化しますので、空腹時の採血が重要です。

 Choの正常範囲は、一般的に220mg/dlまでとされています。
しかし、年齢や性、病気の具合などにより、人によって目標の数字は異なりますので、お医者さんとよくご相談してみてください。

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