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ベトナムの医療-2

ベトナムの医療-2

前稿では、我々日本PC学会が、ベトナムの厚生省および省のヘルスサービス局を視察した内容を報告した。本稿では、ハノイから車で1時間の距離にある村の診療所(Hong Duong)を訪れ、実際に地域医療の実践を目の当たりにしたので、報告する。
 診療所は、緑豊かな田園の中にあり、広さは2haで、建物は平屋でコの字型となっている。中庭には噴水があり、いろんな花が咲き乱れており、安らぎを感じる。正面右から入ると、まず、外来の受付があり、壁には、公衆衛生的な啓蒙のポスターに加えて、ペニシリンなど薬剤の種類と価格の一覧表が表示されている。引き続いて、外来診察室および検査室があり、尿や便などのルーチン検査が行われている。その次には、処置室、陣痛室、分娩室、回復室が並んでおり、スタッフの休憩室と当直室が並んでいる。いずれも、広さは6畳程度である。
 建物はコの字型で、奥の棟には、会議室、カルテ室、計画出産および母子指導の部屋などが続いている。我々は、カルテの整理および記載には、驚かされた。すなわち、この村は9つの部落で構成され、人口は約1万人であるが、まず、患者の出身別に9つの棚に分けられている。そして、患者一人のカルテは、大きさがB6ほどの小冊子となっており、生まれてからの情報が1冊にまとめられており、1人1カルテである。さらに、その個人のカルテは家族ごとに、B5ほどの袋の中に納められている。大家族なのであろうか、1つの袋の中には平均5-10冊ほどのカルテが見つけられる。その袋の表紙には、名前と番号が記載されており、数百のカルテ袋の中からすぐに必要なカルテを見つけることができる。
 また、妊婦管理であるが、壁にはカレンダーがあり、約10カ月先までの分娩予定者が人目でわかるように図示さている。1回目は青、2回目は黄色、3回目以降は赤で色づけされており、これは、本人、家族、医師、スタッフにとって、経験と理解度の把握に有用であるという。母子の指導にも力が注がれており、様々なポスターを用いて教育指導を行っている。
 建物の左の棟は病室となっており、30名のベッドがある。10数名入院していたが、その中に、数日前からの発熱、下痢で若年男性が入院しており、傍らには家族が付き添っていた。我々は診察する機会を得て、スタッフと議論することができた。通常、発熱で来院した場合、必要あれば入院させる。すぐには、投薬せず、2-3日経過をみて解熱剤、抗生物質などを投与する。輸液は1日1000ccまでと定められているとのことであった。
 フー(Phu)院長から話を伺い、詳細な議論を行った。
 担当する地域の総人口は9700人、5歳までの1251人いる、15ー49歳の婦人は2625人、結婚して妊娠可能な人は1252人と把握されている。ここには電気が普及しており、有線放送がある。小学校と中学校は1つづつあり、幼稚園や託児所もある。
 診療所は1958年に創立され、1960年から、現在のシステムで稼動できている。妊婦は、各部落別にカルテが整理されて、計画出産がなされている。陣痛、分娩、回復の部屋があり、そのあと、ほぼ、1日程度で退院するという。日本よりは短いが、この国では保険などの関係で早期退院するとのことだ。入院ベッドは30で、1日の外来患者は約40名である。
 医師は3名で(上級医1名、中級医2名)で、従業員は10名である。スタッフはそれぞれ1つの部落を担当している。毎日、診療所と各地区とは衛生や治療に関する綿密な情報交換が円滑に行われている。すなわち、午前中に我々タスッフが話しあって、各部落に健康情報を送る。そして午後には各地区から人々の健康や疾病情報が集められている。その結果、最近、村の衛生条件はだいぶん良くなった。
 住民の健康の維持増進および疾病の治療に加えて、他に7-8つほどの衛生関係のprojectも行っている。例えば、隣の村と相談しながら、予防注射や、計画出産の啓蒙などである。
 毎年、患者の延べ診察人数は16000人で、1カ月平均43名、往診することもある。
また、託児所や小学校などで診察する」こともある。この診療所が近ければ、隣の村の住民も自由にこの診療所を受診してもよい。
 国としては、人口抑制の政策をとっており、避妊の対策も含め、子供は1ー2人までを薦めている。1歳までの子供には無料で100%に予防注射が行われている。その内容ははしか、はい結核、ポリオであり、必要に応じて他の薬剤も投与する。
 低栄養については、先日の統計では、5歳までの子供の36。3%に見られ、今後、改善に努力している。この1つとして、母親に母乳の重要性を教育したり、栄養のある食事、ビタミンの投与などを啓蒙することである。ヴィタミンのある食事や、こどもが食べる分に十分与えるように教育する。1歳までには、毎月体重測定して、毎年、子供の体重を測定している。一方、大人については毎年調べていないので詳細は不明である。
 現在、各地区に、衛生関係の協力チームがあり、毎日の午後、担当者が各地区の健康および疾病情報を集めてくる。健康問題には2つの段階があり、簡単な健康問題であれば、地区のチームが解決する。解決できなければ、診療所まで連れてくるのである。すなわち、すべての村の住民の健康状態が、毎日把握できているのである。
この協力チームのメンバーは、専任もしくは他の仕事をしながらの併任であり、費用は村の予算でまかなっている。日本で言えば、民生委員に相当するようである。
 医師の勤務時間は一応8時間となっているが、実際ははオーバーしていて、日曜日も働いている。当直は3日に1度あり、従業員も交替で当直している。
 平均、夜間の患者は2ー3人ほどであり、交通事故の場合には、ここで然るべき治療を行い、診療所の能力をこえれば、他の病院に送る。
 肺結核については、9700人の住民の中で、結核の患者は24人ある。彼らは、1ヶ月省の病院に入院して治療を受ける。培養検査や、X線撮影、隔離の問題などについて、議論を行った。
 また、この村は田舎にあり、戦争の影響は少なかったが、戦争による負傷兵が76名いる。彼らは、特別制度により、すべての医療行為は無料となっている。
 我々の感想を述べると、病歴の管理方法は素晴らしいので、今後も、ずっと、続けていくと良い。家族ごとの、日常のカルテの積み重ねが高く評価される。今後10年、20年と続けると世界的にも注目される業績になるだろう。
 最後に、有馬会長は、厚生省のクー氏、ハートイ省ヘルスサービス局長のニア氏、およびHong Duong診療所のフー所長に対して、感謝の意を表し、今後の友好および協力関係を約束した。

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