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ベトナムの医療-1

ベトナムの医療-1

プライマリ・ケア(PC)の重要性が叫ばれ、近年、世界各国で様々なヘルスケアシステムの中におけるPCの実態が報告されてきている。我々日本プライマリ・ケア学会は、WONCA(World Organization of Family Doctors)の一員として、国際会議への出席など活動を行ってきたが、特にアジア太平洋地区の国々の中で指導的役割を演じてきた。しかし、東南アジアのベトナムおよびラオスについては、従来ほとんどその実状が知られていなかった。そこで、本学会では、今回、平成6年8月20ー25日に両国を訪れ、厚生省や医療施設などの視察を行った。本稿では、ベトナムの首都ハノイにある厚生省を視察して論議した内容を報告し、次稿では、ハノイから車で1時間の距離にある地域の病院を訪問し、医療の実践を直接視察したのでそれを報告する。

 ベトナムは面積33万km2、人口は7100万(1993年、以下ほとんどの統計は1993年、一部は1991-2年)、人口密度は215人/km2で、都市部には19.5%、地域には80.5%が住居している。出生数は男34500,女364OO/年で粗出生率は30.04%0, 粗死亡率は7.06%0、自然増加率は22.98%である。
 ベトナムの医師には、上級医(大学医学部卒)と中級医(医学専門学校卒)とがあり、その数は人口1万人あたりそれぞれ4.07, 10.2である。薬剤師(上級および中級)の数は、人口1万人あたり2.45である。国内の総ベッド数は18.4万で、国立病院のベッドがその中で73.2%を占めている。
 ベトナムの中央(中央管轄のハノイ、ホーチミン、ハイフォンの3都市)にある研究所には、痢学研究所4, 栄養研究所1, 労災研究所1, 公衆衛生研究所1, マラリア管理研究所3, 薬剤管理所1, 薬剤ワクチン管理所2, ワクチン研究所1があり、中央の臨床研究所は10施設があり、医学薬学系の大学には、医学校5, 薬学大学1, 医薬学大学1, 公衆衛生大学1, 医療技術学校3, 薬学技術学校1がある。そして、一般病院は11, 特別病院は7, サナトリアム1, らい専門施設2がある。
 次に、ベトナムの地域には、省(日本の県に相当)の病院が189, 県(日本の市に相当)の病院が515, サナトリウム34, らい病院17、医療技術学校(2nd) 50, 地域診療所 1049, 妊婦/母親対象施設 60, 地域ヘルスセンター 9205などが主なものである。
 中央のレベルでは、医療従事者23789名おり、教授と助教授242、医学博士 212, 卒後2,3年の医師1557, 卒後4年以降の医師2719, 準医師473, 医療技術者1407, 正看護婦2343, 正助産婦274, 準看護婦755, 準助産婦25, 準医療技術者1223, 伝統医療者25である。
 薬学には、教授と助教授が63, 薬学博士76, 卒後薬剤師262, 薬剤師1124, 準薬剤師745, などとなっている。
 省(日本では都道府県に相当)レベルでは、医療従事者は72778名で、医学博士34, 上級医11766, 卒後2,3年の医師2023, 薬剤師2729, 中級医7241, 正看護婦7330, 準看護婦6422, 伝統医療者109となっている。
 県(市に相当)レベルでは、上級医10902, 中級医17961と地域社会で活躍している。
 地域(町、村)レベルでは、上級医1524, 中級医15163となっている。
 我々日本PC学会は、ベトナム厚生省の代表であるクー(Cu)氏とチョー(Chau)氏と会見を行い、様々な議論を行った。
 小松理事が司会を担当し、まず、有馬会長が挨拶を行った。日本とベトナムは、近い国でありながら、従来あまりお互いに知らない部分が大きかった。今回PC学会が訪問した主な目的は、貴国と親密な交流を深めたいことである。我々の学会は、患者を毎日診察し、医療、健康および医療制度に関心をもち、世界の医療の向上に寄与したい医師の集まりである。当学会は世界の組織であるWONCAに所属しており、来年の6月に香港に世界大会を予定している。
 厚生省のクー氏から次の話を伺った。ベトナムは、1975年に開放され、その後、全国各地で同一の健康管理と治療対策を行うことになった。同時に、国民の健康を維持増進するため、衛生知識を全国各地で教育した。医療の診断技術と治療に関しては、医療の質を挙げるために、様々な医療機器を取り入れ、できる限り近代化して、外国のレベルまで近づけたいと考えている。
 健康保険については、2年前からベトナムで健康保険制度が開始されたので、厚生省は今後この重要な問題を取り上げていくことになろう。具体的には、役人や公務員はすべて健康保険を入り、約300万人に及んだ。農村や地域については、自分自身で保険料金を払う制度であり、約3分の1が入っている。現在、保険に入っている一般国民は約3分の1程である。
 
 次にクー氏と共に、ハートイ(Ha Tay)省のヘルスサービス指導局を訪れ、局長のニア(Nghia)氏から省(日本の県に相当)全体の医療・健康サービスの実態に付いて話を伺った。
 ハートイ省には、県(日本の市に相当)が14あり、人口は220万人である。局の業務は、衛生局を指導し、免疫、予防注射など様々なプロジェクトを行う。また、省の病院を指導し、結核、皮膚の病気など様々の疾病患者を治療する。け省の病院の下部組織には、県の病院があり、それぞれベッド数は100-150程度で、患者の治療に加えて、計画出産なども行っている。さらに、県の病院の下部組織にはは村(町、村に相当)の診療所があり、4ー6名ほどの医師が、それぞれの地域で人々の健康を守っている。省と県、県と村の病院間では、必要に応じて患者の紹介もなされている。
 タイマイ県には、24の村があるが、それぞれの診療所では、概して、中級医と看護婦が診療を行っている。今後もの目標としては、2000年までには、それぞれの診療所に上級医を1名ずつ常勤させたいと考えている。
 個人的開業医は数は少ないがある。彼らは、もともと医師であるが、定年退職した後に、小規模の診察室で医療を行っているものである。病院といわれるものはすべて国立である。
 病院の医療の予算については、国から入る予算と、2年前から健康保険制度が発足したのでそれから入る予算の2つで賄っている。その比率は、9割ほどが国からの予算である。タイマイ省の予算は、約45億タイドン(50万米ドル)である。
 健康保険制度が発足した後も、患者数はほぼ同じである。健康保健制度は公務員、公社員に行われ、診療費の30 %を個人が負担しているということであり、国民皆保険ではない。最近、問題となっているものとしては、肺結核や、下痢、細菌による病気である。これらの問題は病院における診断と治療よりも、むしろ、水を含めて環境と衛生の問題が重要であるので、これに関する指導も行っている。
 本稿では、ベトナムの厚生省のクー氏、および省のヘルスサービス局のニア氏と会見し、論議した内容からまとめたものである。次稿では、地域の病院を実際に視察した内容を報告したい。

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