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バランスに優れた全人的医療を望む

バランスに優れた全人的医療を望む

日本医師会がバランス感覚に優れた全人的医療を今後目指すことを
期待し、私見を若干述べさせていただきたい。
 筆者はECFMG資格を取得し、以前に米国の家庭医学レジデンシー
で臨床研修できた。その後日本医師会の推薦により、シドニーの
WHO医学教育センターでプライマリ・ケア(PC)医学と医学教育法を
学んだ。日本PC学会の国際交流委員として今までに14カ国の医療
事情をレポートしてきている。

 先日訪れたメキシコについて、簡単に紹介したい。同国の政治・
経済・医療は、資本主義のゆがみが極まったものとされる。
国民総生産(GDP)は日本の10分の1で、国民一人当り世界第25位。
国の年間予算が東京都とほぼ同じ。歴然とした貧富の差があり、
医療にも二重構造が存在する。
 貧困層~中級家庭は、診療が無料だが不十分な医療レベルの公立
病院に行く。患者数は相当多く待ち時間が長く、手術や入院待ちは
当り前。インフォームドコンセントが考慮されないケースも多い。
一方、裕福層は設備が充実した私立病院を受診する。十分に時間を
かけ、高い質の医療が約束された自由診療だ。診療費は高く、
内視鏡検査費用は350USドル($)と一般市民の月収に相当。医師は
診療費を自由に設定でき、医師の報酬は約2~3万$/年という。
 公的な医療保険制度はなく、民間医療保険が契約者の経済状態に
より3段階に設定。医師夫婦の場合、年間で約2000~2500$、
子供一人に400~500$かかる。米国に隣接する同国は、ITなど
のメディアを通して医学面の技術改革に敏感だ。特に臓器移植の躍進
は目覚しい。倫理面のハードルが低く、臓器提供のプロモーションも
合わせ、かなりの数の臨床例がある。このように、同国では先進医療
が展開しながら、一方で経済的理由により通常の診療が受けられない
アンバランスの状態が継続している。

 日本の医療は米国の医療を追随し、世界でも最高水準だ。近年は
病院管理学やEBMが導入され、混合診療も検討中。将来、メキシコの
ように「医者にかかれない」ようなことが起こりはしないかと危惧して
いる。PCの特徴としてACCCAが知られるが、まずは近接性
(accessbility)が最低条件であろう。
 一方、筆者が報告してきたベトナム、ラオス、南アフリカ共和国
ジンバブエ、キューバなどには、古き良き医療の姿がある
(http://hb8.seikyou.ne.jp/home/pianomed/)。人間は
デジタルではなくアナログの存在であり、EBMに加えnarrative-
based medicineの視点も必要だろう。可能なら、医師会の先生方
にも途上国の実際の現場をみてほしい。

 いちど医療の原点に戻り、患者のニードや資源の有効活用を
再検討し、時間という縦軸とグローバルな横軸がうまく組み合わ
さり、バランスに優れた医療への展開を望む。

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