◆ アンチエイジング的なコンディショニングの実践

  ~ マスターズ陸上競技選手を中心に  ~

中村巧
板東浩

SUMMARY
・ アンチエイジング(抗加齢医学)の考え方が重要である。
・ 食事に注意し、slow & mild に継続的に運動する。
・ 全身の鍛えられる所は全て鍛えるという発想でトレーニングする。
・ 体は非常に精巧な機械で、徹底したメインテナンスが必要である。
・生涯スポーツ社会づくりの成否が、大きなポイントとなろう。
 

● はじめに

筆者は、整形外科クリニックと附設パワーリハ・アンチエイジングセンター(介護予防施設)で、運動・リハビリ指導および管理栄養士による食生活指導を継続している。現在49歳であるが、従来、関西地区でマスターズ(以下Mast)陸上競技100m、200m、走幅跳に参加し続け、2005年には全日本選手権大会にも出場(図1)。本活動を通じてMast陸上選手の医学的・健康的問題にも触れ、諸問題を考える契機となった。
「100歳まで生き延び、100m、200m、走幅跳で三冠を獲得する」という目標を設定し、自分の体で試しながらコンディショニングを行っている。その経験を、患者の「健康長寿により如何に自立した人生を送ってもらえるか」という点に反映させながら、診療している。 
 以上は、抗加齢医学会が唱える「体の全ての組織が平行して老化する、弱点を作らない」というアンチエイジングの方向性に合致するだろう。本稿では、従来行ってきた実践および今後の問題点などについても触れたい。本稿の構成として、最初に「中高年アスリート・アンチエイジングへの必要条件4項目」(表1)を示した後、各項目の詳細を述べたい。

表1 中高年アスリート・アンチエイジングへの必要条件4項目

1)全身の血液循環・代謝をよくする。しなやかな血管を維持し、安静時血圧・安静時心拍数を低く保つ身体作  りを目指す。
2)膝関節(特に膝蓋大腿関節)、腰(特に椎間板、椎間関節)などをオーバートレーニングで痛めないよう注  意する。
3)全身の鍛えられる所は全て鍛えるという
  発想でslow & mildに鍛えていく。
4)100m走は、車のギアチェンジと同様にロー・セコ・サード・トップと各時期に応じて使う筋肉を移行させ  ていく。これを理解し、身体にも経験させ感じ記憶させる。

● I.全身の血液循環・代謝を良くする

 しなやかな血管を維持し、安静時血圧・安静時心拍数を低く保つ身体作りを目指す。まず、生活習慣が重要である。カロリー制限は寿命を延ばすことが知られている最も有名な話だ。カロリー控えめのバランスの良い食事と軽い運動の継続により、循環・代謝は適切なレベルに保たれる。この方法によってのみ人間の身体は根源的に良くなるように遺伝子レベルで設計されているのであろう。
 食事は肉類を少なく魚を中心とし、多種類の野菜を毎食大皿に山盛り食べるようにする。野菜に1万種類以上含まれているといわれているファイトケミカルの摂取が推奨される。シーフードベジタリアンに近い食生活と言える1)。有名なカール・ルイスやナブラチロアはベジタリアンに近い食生活をしていたという。
 また、体重(BMI)のコントロールも大切である。一般的にBMI 22が標準体重とされるが、近年東洋人ではBMI 23以上は肥満傾向で2)、メタボリックシンドロームになる可能性が報告されている3)。BMI 18.5(痩せ)と23.0の中間値は20.75となる。また、抗動脈硬化作用・抗糖尿病作用がある血中アディポネクチン濃度はBMIと逆相関する4)、すなわちBMI22よりもBMI 20~21 の人の方がアディポネクチン濃度が高いと報告されている4)。さらには、90~100歳の部で100mに出場している選手は全員細身で、BMI 20~21程度と推察される。以上の理由から、将来、東洋人ではBMI 20.75が最適と判断されるかもしれない。ちなみに、現在私はBMI 20.5を維持し、80歳で 20.0、100歳で19.5、120歳で19.0を予定している。加齢とともにBMIを下げるつもりで、「中高年アスリートは、加齢とともにBMIをより低くコントロールする方がよい」という新しい考え方を提唱したい。メタボリックシンドロームの概念の普及、心血管系イベントの一次予防の啓発に加え、より低い血圧や血清脂質、血糖コントロールが要求される時代背景と一致する。

● II. 身体の障害を防ぐ
 
 膝関節(特に膝蓋大腿関節)、腰(特に椎間板、椎間関節)などをオーバートレーニングで痛めないよう注意する。
 整形外科的観点から、大会に共に参加しているマスターズ選手の例を紹介したい。

1)やや無理がある中年期アスリート
 A氏は45~49歳の部で100m、200m、走幅跳の三種目全てに全国大会の優勝歴がある。
しかし、A氏は難治性アキレス腱炎を抱えながら、アキレス腱に過度に負荷のかかるトレーニングを続け無理をしながら出場している状況がある。
 B氏はA氏についで近畿大会で100m 第2位であり、腰椎椎間板ヘルニアという大きな問題を有する。しかし、100kgの重量をかけたスクワットを継続中だ。両氏の背中を見ながら筆者は走っているが(筆者は12秒90で近畿大会第5位)、両氏の練習内容を懸念している。
2)世界新記録の95歳アスリートの調査
 2005年に95歳~100歳の部100mで21秒69の世界新記録を出したH 氏は強い負荷をかけず軽いトレーニングを日課とする。パワーアップより滑らかに動く身体を目指すコンディショニングに重点をおく内容だ。世界記録が出た瞬間、私も現場でH氏の走りを目の当たりにした。その映像や日々の練習風景は報道ステーションなどで放映されている。
3)マスターズスポーツの真髄とは
 筆者はH氏の家族に、食事や練習内容を尋ね調査する機会を得た。その結果、中年期・壮年期(40歳~70歳)と高年期(70歳~100歳)のトップアスリートとは全く別物だと考えるに至った。つまり、前者は短期的な記録を目指し、筋トレなどで負荷をかけ過ぎ関節軟骨・靭帯、腱、筋、腰などを痛めてしまう傾向がある。一方、後者は記録よりも健康長寿や生涯スポーツ、アンチエイジングに徹しているため、slow & mildトレーニングで無理のないコンディショニングが行われているようだ。
 記録を出すことを目的とする場合もある。しかし、生涯スポーツを通して健康長寿をめざし、より快適な人生の下支えとするのがマスターズスポーツの真髄ではないだろうか。
 現代は、他者との競争で順位を決定し価値を見出す傾向がある。逆に、自分の記録を基準とした評価基準を作成し重視してみよう。すると、生涯スポーツを楽しむ社会づくりとしての位置づけがより明確となり、多くの人々の参加が促されるだろう。競争ではなくコンディショニングを重要視することで、マスターズスポーツは今後より広く普及すると考えられる。

● III.全身すべてをslow & mildに鍛えよう

1)脊椎機能単位と深層筋に注目しよう

a) 脊椎機能単位(Functional Spinal Unit.以下FSU)に注目し深層筋を鍛えたい。
 脊柱全体の運動は、隣接する脊椎間の運動が連続合成されて生ずる。そこで脊柱の運動や生体力学を考えるうえで、隣接する脊椎とこれを連結する椎間板や靱帯を一つの機能単位と考え、FSUと呼ぶ5)(図2)。
 各椎間には12個の負荷が働く。XYZ座標軸のまわりの6つの回旋運動(モーメント)と、座標軸にそった6つの並進運動である6)(図3)。この12個の運動を意のままに自由自在に動かせるのが固有背筋とよばれる横突棘筋(回旋筋、半棘筋、多裂筋)脊柱起立筋(棘筋、最長筋、腸肋筋)、棘間筋、横突間筋である7)。走行距離の短い筋肉ほど深層に位置し、より細やかな運動に関与する。すなわち、各FSUを細やかに動かせる深部の筋肉を鍛え調整することが、より細やかなバランス、より細やかなパフォーマンスに繋がるのである。

b)肩甲骨(肩関節)と骨盤(股関節)に注目し深層筋を鍛えよう
 肩関節では深層筋(インナーマッスル)である腱板トレーニングは有名であるが、肩甲骨を動かす筋肉の中で肩甲挙筋、菱形筋、前鋸筋などの中間層筋トレーニングも重要だ。その次には浅層筋である僧帽筋、三角筋などを鍛える。FSUから脊柱全体へと波のように広がったうねりが肩甲骨の深層筋、中間層筋、浅層筋の順に収縮が広がり、ワイルドな動きとなる。
 骨盤(股関節)も同様だ。深層筋(小殿筋、梨状筋、双子筋、閉鎖筋、恥骨筋、短内転筋、大腿方形筋、腸腰筋、腰方形筋など)、中間層筋(中殿筋、長内転筋、大内転筋など)、表層筋(大殿筋、腹筋、腹斜筋、広背筋など)の順に鍛える。FSUから脊柱全体に伝わったうねりが骨盤(股関節)の深層筋、中間層筋、浅層筋の順に収縮が広がり、ワイルドな動きとなる。
 すなわち、FSUから細やかに始まった動きが、肩甲骨(肩関節)、骨盤(股関節)にドミノ倒しのように拡大し、繊細であり野性的でパワフルなパフォーマンスが発揮できる。

c)イチローの秘密に迫ろう
 イチローは、脊椎の深層筋に加え、肩甲骨や骨盤・股関節の深層筋も微妙に動かすことで、多種類のボールに瞬時に対応でき、他者には追随できないパフォーマンスを発揮している。またピアニストが七色の音色を奏でられるのは、指に加え脊椎、肩甲骨、骨盤・股関節の深層筋も動員させているからだろう。つまり、FSUの骨格系と、それを細やかに調節できる深層筋などの筋肉系、さらに筋肉系を支配する神経系と絶妙なるバランスが生まれる。そのため絶妙なるパフォーマンスが発揮されるのだ。

2)バランスのトレーニング
 スポーツの全てが、不安定の中で安定を追求するものと言える。重力を感じ重心線を移動させる不安定な姿勢で、安定したパフォーマンスを発揮しなければならない。このために、重力を最も感じるセンサートレーニングの最前線としてビジョントレーニング、足底プロプリオセプティブリセプタートレーニング、さらに筋紡錘、ゴルジ腱器官、前庭、三半規管、小脳などを鍛えるバランストレーニングもある。これらのバランスを司るのは主に深層筋とされ、バランストレーニングによって深層筋、さらには深層筋の筋紡錘、神経、脳も鍛えられ、促通されると考えられる。深層筋は通常の筋トレでは鍛えることが難しい。例えば片足で立つ、不安定な物の上に乗る、バランスボールを使うなど、不安定な状態を意図的に作ることで、バランスの訓練をするとよいだろう。

3)中高年のコンディショニング
 近年、ヨガ、太極拳、気功、ピラテスが外国から本邦に導入されつつある。これらはストレッチング、有酸素運動、軽い筋トレ(特に深層筋)、バランストレーニング、自律神経訓練法を織りまぜた内容で、中高年のコンディショニングに優れている。特に、呼吸運動を重視しているのが特徴だ。鼻から自然界の大切な物質をゆっくり大きく吸い込み、口から体の不要物をゆっくり排出する。自律神経機能トレーニングの代表的なもので、リラクゼ-ション効果も大きい。当院で行う下肢深部静脈血栓症(DVT)のエコー検査の際、鼠径部にプローブをあて静脈のドプラ血流速波形を計測すると、呼吸運動が静脈環流への大きな関与が明らかで、身体に与える重要性を改めて感じざるを得ない。
 最近話題性に富むものに(表2)、ゆる体操(ゆるシステムトレーニング)8)、初動負荷トレーニング9)、PNF(Proprioceptive Neuromuscular Facilitation,固有受容性神経筋促通手技)10)、自律神経機能トレーニングなどもある11)。

表2 注目するトレーニング法のポイント

1)ゆるシステムトレーニング
 武術、ヨガ、太極拳、気功の根本にある最も大事な要素である「ゆるむ」ことを習得する。体幹部の深部感覚を目覚めさせ、特に肋骨と背骨と腰がゆるみ、自由自在に動く状態を目指す。トレーニングを重ねると、体のパーツをバラバラに動かすことができ競技力を高められる。
2)初動負荷トレーニング神経、筋(筋紡錘)などの働きを高め、主動筋・拮抗筋の共縮を防ぎ、体幹部の筋群で発生した力が四肢末端部へスムーズに伝達される運動形態を目指す。特に、身体機能を向上させる場合に効果が認められる。
3)自律神経機能トレーニング本法は呼吸法とうまく組み合わせる。まず1分間に6回程度の深呼吸で、ゆっくり鼻から吸ってゆっくり口から吐く。これが圧受容体に影響を与え、循環動態を調整させる。アスリートは交感神経機能と副交感神経機能に優れ、調節能力の維持増進に役立つ。
4)PNF(Proprioceptive Neuromuscular Facilitation: 固有受容性神経筋促通手技)生体組織を動かすことにより感覚受容器を刺激し、神経・筋などの働きを高め、身体機能を向上させる方法である。特にスポーツPNFは対角・らせん運動、各種の反射機能に注目したトレーニング方法。

4) 筋肉トレーニング
 全身の筋肉を無理なく鍛えるが、赤筋のみでなく加齢で衰えやすい白筋も鍛える。ただボディビルダーのような全身が肥大した筋肉ではなく、体の中心部(コア)の体幹、臀部、肩甲周囲の筋肉を機能的に鍛え、逆に大腿四頭筋、下腿、前腕の筋肉を必要以上に肥大化させないように注意したい9)11)12) 13) 14) 15)。
 筋トレでは、深層筋よりも浅層筋や中間層筋を鍛えているのが現状である。従来の重錘式筋トレマシンで確かに筋力は向上するが、関節に急激な負荷がかかるため、関節軟骨・靭帯、腱・筋、腰の負傷リスクの増大に注意する。
 一方、最新の空圧式・油圧式マシンでは、負荷がかかると抵抗が加わる構造のため、関節軟骨・靭帯、腱・筋肉、腰に急激な負荷をかけず、傷害・障害を来し難い。油圧式では求心性・遠心性トレーニングを交互に行えるため神経・筋協調運動に有用で、中高年者に適している。
 2006年4月から始まった要支援1・2の介護予防について注意点がある。高齢者に重錘式筋トレマシンで中等度から高度の負荷をかけ、短期的改善効果(3ヶ月単位)が評価される点だ。あくまで中高年者には軽度からせいぜい中等度までの負荷で中長期的にゆっくり鍛えるのが重要だろう。今後マシン及びトレーニング方法の選択の際に、参考としてほしい。

5)歯、歯肉の管理
 歯周病は、呼吸器疾患に加え動脈硬化との因果関係や、口腔内を清潔に保つ重要性がクローズアップされている。歯肉を如何に健康に保つかがポイントだ。毎食直後に超音波電動歯ブラシで歯、歯間、歯肉、歯周ポケット、舌を磨き、歯ブラシ先端の届かない歯間・歯周ポケットにもジェット水流で水分子が入る所まで洗浄し、糸歯ブラ
シも使用するとよい。
 8020運動の発展型の10028運動のために、歯磨きよりも「徹底した口腔内洗浄」という概念が大切で、広く周知させる必要がある。

6)脳への刺激を継続
 いかに100歳まで脳を若く保ち、単なる維持ではなく発達させられるだろうか?脳を活性化するには、100歳まで仕事、趣味などを通じた創作活動を行い、社会と接点を持ち、死ぬまで勉強し、新しい分野に挑戦するとよい。近年、特に前頭前野を鍛える「脳を鍛えるドリル」や「任天堂DSトレーニング」などが紹介されており、前頭前野に加え脳全体を鍛えることが重要と考えられる。

● IV. 筋肉の解剖・生物の進化を知り100mを疾走する

 Mast選手などが高いパフォーマンスを発揮するためには、各筋肉の解剖や走行を充分理解しておく必要がある。スタートから加速期には羽状筋を中心とした筋を使い、疾走期にはハムストリングスなどの紡錘状筋を中心としたスピードを発揮できる長い筋を使う。ロー、セコ、サード、トップの時期に応じて使う筋肉を徐々にスライドさせていく。
 ローでは、海の中で魚類が脊柱を左右にくねくねくねらせるイメージ15)。セコでは、脊椎動物の進化の中でも一大イベントであった海から上陸した両性類が、脊柱を左右、斜にくねらせるのに加え両肩・両股関節を使うイメージ。サードでは、哺乳類(チータなど)がFSUを12方向に動かすことにより脊柱をユニバーサルジョイントの如くくねらせ、両肩・股関節に伝達する。トップでは全能力を全開し、手足末端をリラックスさせて疾走する。  
 発生学では「個体発生は系統発生をくり返す」という有名な言葉がある。母親の胎内10ヶ月が40億年の体験だ。生物誕生以来40億年で獲得した全能力を、100m疾走の10数秒間で系統発生をくり返す如く発揮する。つまり「100m疾走の中で系統発生をくり返す」「10数秒間で40億年をくり返す」とも考えうる。これらが、四肢を着いたクラウチング姿勢でスタートし、両上肢を地面から離し前傾姿勢を保って加速し、徐々に頭を上げいく一因かもしれない。
 いずれの時期でも、体幹部、臀部を中心とした走法、手足末端の力を抜いたリラックスした軽やかな走りを追求していきたい。

● ? トレーニングの具体例と検査
 前述したFSU関連のトレーニングメニューを表3に、実践例を図4-1~4-13に示し解説した。当院のアンチエイジング検査についても表4に列挙した。本領域のさらなる展開のため、今後新たなチェック項目を増やしていきたい。

表3 具体的なトレーニング法

・足(足底プロプリオセプチィブリセプター、縦・横アーチ、足の血流)
・目(ビジョン)を鍛える
・バランストレーニングで筋紡錘、ゴルジ腱器官、前庭、三半規管、小脳、深層筋などを鍛える
・ゆる体操、ヨガ、太極拳、気功、ピラテスで深層筋を中心として鍛え、重力も感じながら、ゆるやかに滑らかに動く身体を目指す。
・有酸素運動で循環器、呼吸器を中心に鍛える。
・重力に負けてなりやすい膝伸展障害を予防するため腓腹筋ストレッチ、円背(胸椎後弯)予防にバックテックを使用したストレッチを行う。
・油圧式マシン10台で全身の筋肉を万遍なく軽くスローに筋トレする。これにより、内臓のマッサージ効果も期待する。

表4 アンチエイジング検査
・骨塩量(DEXA)、
・脈波伝導速度(PWV、血管年令)、
・頸動脈エコー・DVTエコー検査、
・エコーによる皮下脂肪・脂肪肝検査(肥満外来)、
・睡眠時無呼吸症候群検査、
・呼吸機能検査・呼気CO濃度検査(禁煙外来)、
・食後自己血糖測定機器貸出し(糖尿病に対する低炭水化物食指導)

●おわりに

 1)抗加齢医学を念頭に置きつつ、運動継続の重要性や効果について記した。長期の運動継続によって反応時間が改善するエビデンスもある16)。脊椎の理論を基盤に、当院における様々なトレーニングの実践は、中・長期的に種々の機能改善をもたらすと期待している。
 2)生物が40億年かけ築いてきた複雑系の全てを、数百年の要素還元主義である西洋医学だけでは現在のところ完全には説明できない。東洋的思想として、自然と共にnaturalに、slow & mildに生きるという姿勢が重要と考える。
 3)先進国では30年後に平均寿命が100歳近くになるという推測もあり、健康長寿を如何になし得るかが今世紀最大の課題と言っても過言ではない。そのため、弱点を作らないアンチエイジング的考え方が重要であり、生涯スポーツ社会づくりができるか否かが大きなポイントになるだろう。将来に向け、さらなるマスターズスポーツの普及を願ってやまない。

参考文献
1)安岡博之:シーフードベジタリアン.株式会社ヴォヴィス.2002
2)成人アジア人のBMIによる提案体重分類:アジア、太平洋の展望:肥満とその治療を再定義する。世界保険機関西太平洋地域事務所.国際肥満研究会・国際肥満対策委員会.2000.P18
3)太田嗣人、櫻井勝:日本人で代謝異常が増大するBMI閾値. 日本肥満学会誌2005 VOL.11 NO.3:77-82
4)下村伊一郎、松澤佑次:メタボリックシンドローム病態の分子生物学.15-27.2005
5)越川亮、古瀬洋一、越宗正晃:バイオメカニクスよりみた整形外科:各関節の運動学(脊柱).60-70,1988.
6)August A, White?, Manohar M, et al.: Clinical Biomechanics of the Spine.45-55.,1990.
7)人体の正常構造と機能 運動器:日本医事新報社.2005
8)高岡英夫:「ゆる」スポーツ・トレーニング革命,大和書房、2005
9)小山裕史:野球トレーニング革命(改訂版),ベースボールマガジン社, 2004
10)覚張秀樹、矢野雅知:実践スポーツPNFコンディションニング.1998
11)末武信宏:さかえクリニックにおけるメディカルサポート,コーチング・クリニック2006.2:6-9
12)小田伸午:スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと,大修館書店,2005
13)責任編集 高野進:100m 末續慎吾 たゆまぬ挑戦を続ける「かけっこの天才」の真実. Tarzan 特別編集 2005.7.20
14)速く走るトレーニングBOOK :成美堂出版.2005.11.10
15)高岡英夫:究極の身体:運動科学総合研究所.2003
16) Ari Z, Kutlu N, Uyanik BS, et al. Serum testosterone, growth hormone,and insulin-like growth factor-1 levels, mental reaction time, and maximal aerobic exercise in sedentary and long-term physically trained elderly males. Int. J. Neurosci. 114(5): 623-37, 2004.

図1 世界新記録を樹立した95歳マスターズ選手と筆者
図2 脊椎機能単位(Functional Spinal Unit:FSU)
図3 6つの回旋運動と6つの並進運動
図4 当院での実践例

図は割愛

powered by Quick Homepage Maker 4.91
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM